煮沸について

ビール醸造

煮沸の目的は第一に消毒にあるが、それだけではない。

モルトの風味を増す
麦汁を煮沸すると、カラメル化メイラード化が起きる。
カラメル化は、糖分が程よく焦げてカラメルのような風味が生まれる現象のこと。
メイラード反応は、たんぱく質と糖分が融合して茶色になること。豊かなモルトフレーバーを生むのに必要な工程である。

雑菌の除去
煮沸によって、ビールに不快な匂いをもたらす揮発性芳香化合物を取り除くことができる。
中でも是非追い出したいのが、硫化ジメチル(DMS)と呼ばれる風味化合物。
DMSは野菜のような臭気で、大抵の場合茹でたトウモロコシに近い香りがする。
この香りは糖化の際に発生するが、麦汁を煮沸すると水蒸気とともに次第に蒸発していく。
そのため、煮沸中は蓋を外しておくべき

ビールの透明度を増す
煮沸を始めた段階で、たんぱく質とタンニンが互いに反応して大きな塊になる(ホットブレイク)。
これらは麦汁に溶けず、煮沸容器の底に沈殿していき、最終的に麦汁は煮沸前よりはるかに透明になる。
たんぱく質は泡持ちの元なので、泡がなくなってしまうのではないかと懸念するかもしれないが、煮沸を続けていくと小さなたんぱく質のかけらがこうした塊から引き剥がされ、ビールは濁るが泡持ちは良くなる。

ホップの苦みを引き出せる
煮沸はホップにいくつか大きな影響を与える。まず、ホップに含まれるアルファ酸を異性化する。
異性化されたアルファ酸(イソアルファ酸)は苦くて溶けやすくなるため、麦汁に溶け込んで最終的に出来上がったビール中に残る。
1.煮沸の度合いが激しいと異性化の効率は上がる。
2.一方で、麦汁のサンドが高いと効率は低下する。
3.また、ホップの使用量が多いほど効率は落ちる。


煮沸をすると香り(アロマ)成分も徐々に消えていく。
そのため、煮沸されている段階では苦みを加えるためのホップ(ビタリングホップ)を加え、熱が冷めた段階で香りを加えるためのホップ(アロマホップ)を加えるということがセオリーである。

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